期待値をチューニングする

吉祥寺.pm30 で、チューニングがテーマだったので、マネージャとメンバー間で期待値をチューニングするという LT をしてきた。

トークタイトルは熊とワルツを。トム・デマルコの本です。

「管理」という言葉

「管理」と訳される単語は色々ある

goo 和英辞書 によると

  • 〔経営〕management
  • 〔経営,運営〕administration
  • 〔統制〕control
  • 〔監督〕supervision

英辞郎 on the WEB によると

  • administration〔【略】admin. ; adm.〕
  • caretaking(建物・土地などの)
  • caretaking〈英〉(学校などの公共施設の)
  • charge
  • conduct(業務などの)
  • control
  • custody(大事な物の)
  • direction
  • governance(学校・企業などの)
  • government(組織などの)〔不可算〕
  • hand〔通例、hands〕
  • intendance
  • management(会社などの)
  • oversight〔【同】supervision〕
  • stewardship(他人から預かった資産などの)
  • superintendence〔【動】superintend〕
  • supervision

こういうのは英英辞典を引くとニュアンスの違いを読み取れるのでロングマンで調べていく。

https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/administration

し、ググるといくつも出てくる。

ざっくり言うと

  • administration
    • 方針や目標を設定する
    • 政権
    • 行政的な事務業務
  • control
    • 制御する
    • 定常業務
    • 大きな変化を伴わないものを安定動作させる
  • management
    • administration で決まった方針を具体化する
    • (暴れ馬を) 乗りこなす

みたいなイメージがあるっぽい。

特に control と management の違いは面白くて、例えば車の運転は management じゃなくて control であろう。management はもっと変化をする (しなければいけない状況である) のを期待されている。

今プロジェクトに必要なのは、決まった型から外れないように control する人なのか、暴れ馬を乗りこなす人なのか。自分はどちらを求められているのか、というのを認識したり、上長と握ったりしておくと、期待に合った変化を持ち込めそう。

だいたいこういうのは職位によって期待が決まっていて、定型的、典型的なものは少しジュニアな人に、より上位の人には、典型的な要件を越えて、または典型的な要件の中で筋よく発揮することを期待している。守破離ですね。まずは教科書通りに control する成果を、慣れてきたら教科書から外れたものでもなんとかする、自分の方法論を新たな教科書としてまとめていくような成果を出して欲しい。

リスクマネジメント

リスクマネジメントプロセスは ISO 31000 に書かれていて、このプロセスのループを回していくことで安定的にプロジェクトを進めたい。

リスクマネジメントと現場の気づきの重要性 | オージス総研 より

このループは、ジュニアなうちは判定業務と言える。

  • 事前に決まっている判定基準に照らし合わせて、アラートを上げるべきと判定する
  • 事前に決まっているプランBに切り替えるかどうかを問い合わせる
  • 決まっていたプランBを遂行する

より上位になると、リスクの掌握そのものを行って欲しい。

  • リスクを特定するための観点をまとめるとか、観点からリスク一覧を作るとか
  • リスクの評価関数を定めるとか
  • リスクへの対応手段を決定しておくとか

整えられた状況で達成できる、ではなく、どんな状況でも達成できる、を期待されていると言える。

どんな状況でも達成するためには、リスクを洗い出しておいて、リスクごとに対応方法を決めておく。リスクが高まってきたら「最悪松竹梅の梅に切り替えれば良い」ぐらいの精度が初期状態として、梅を実際にタスク分割して見積もっていくような動きを取っていくことになる。

理想として松プラン、普通の成果としても竹プランに着地させるプロジェクトマネジメントを期待しているが、ダメだったときに梅プランには着地させる。梅にすら着地できないは、避けたい。

松竹梅を出すとか、今のままじゃダメそうかどうかをどう判定するかとか、どのプランに着地させるかを決めるとか、着地させるためにどう動くかとかを、自分で決めることを期待されているのか、それともそこまでは期待が無くて方針は上の方で決まっているのかは、administration や management、control の差なのではないか。

委譲

Management 3.0 (今年、邦訳が出るらしい?) で紹介されているツールに Delegation Board というものがある。

アカツキさんの例 とか CyberAgentさんの例 とかを見ると感覚が掴めると思う。

委譲は 0/1 ではなく 7 段階のグラデーションがあり、どの段階と考えているかをお互いに認識を揃えよう、そして理想の委譲段階にしていくために情報や判断をしっかり渡していこう、というツール。

  1. 指示する :管理者として意思決定を行う
  2. 売り込む :意思決定についての人々を納得させる
  3. 相談する :決定する前に、チームからの意見を得る
  4. 同意する :チームと一緒に決定を下す
  5. アドバイスする :チームによる意思決定に影響を及ぼす
  6. 問い合わせる :チームの決定後のフィードバックを求める
  7. 移譲する :特に影響を及ぼさずチームに任せる

似たようなツールに RACI 図がある。

asana.com

これはタスクごとに

  • Responsible (実行責任者)
  • Accountable (説明責任者)
  • Consulted (意見を述べる人)
  • Informed (報告を受ける人)

をハッキリさせておこうというツール。

この RACI と Delegation Board の各委譲レベルを対応させると、以下のようになるのではないか。

Delegation Level mamager member
1(指示する) A,R
2(売り込む) A,R I
3(相談する) A,R C
4(同意する) A,R R
5(アドバイスする) A R
6(問い合わせる) I A,R
7(移譲する) A,R

という話が アカツキさんのブログ にあります。

「4. 同意する」のところでは実行責任が同列にある、「6. 問い合わせる」では Accountability もマネージャ側のものではなくなっている、「7. 委譲する」だと報告されることもない、とかがより分かりやすくなって、非常に面白い。

まとめ

  • 管理にも色々ある
  • management を求められているのか、control を求められているのか
  • 委譲度合いも認識を合わせて上手くやろう