2 月から、Mackerel チームの所属になった。
今日から異動して Mackerel チームです。非正規ルートでの要望でもいい感じにやるので何でもください!
— Takafumi ONAKA (@onk) February 1, 2023
これを期に、せっかくなのでコードを読まないマネジメントスタイルを試してみようと思って、実践している。
今までは自分が一番プロダクトのコードベースに詳しい状態を作ってきていて、障害対応でも嬉々として先頭に立つようなテックリードスタイルだった。
この姿が天職と思っているが、今までの人生で、コードの細かい話が通じない (というか、共通言語や会話のレイヤーが違う) けれども非常に信頼できるマネージャーと仕事をしてきた経験はあるので、自分も彼らのようなムーブが可能なんだろうかとやってみたくなったのだ。知識欲が減衰した老害化現象ではないと思う。きっと、たぶん。
もう半年以上業務ではコードを触っていないが、ISUCON に負けたとき用の言い訳を用意しているわけではない。今年の ISUCON 13 はチーム No.117 で参加します。勝ちに行くぞ!
「掌握する」をやる
さて、異動にあたって、観察と干渉のバランス を意識しようと考えた。
僕の言葉ではこれは「掌握する」となる。
[名](スル)《手ににぎる意》自分の思いどおりにすること。全面的に自分の支配下に置くこと。「政権を―する」「部下を―する」
※一応書いておくけど、以下は個人の感性に基づく感想です
「把握」は「独力で説明できる」状態を指している。観察の結果として割と早期に獲得できる状態だが、あくまで説明できるだけで、有事に判断を下すことは「把握」だけだと難しい。
一方「掌握」は「変えようと思ったら変えられる」状態を指している。(こういう状態を (control と対比した) 《manage》と言うんじゃないか、というのは 以前書いた)
掌握するとは、どこを変えたらどこにどんな影響が出るかの検討が概ね終わっている状態を指している。この「意のままにできる」感を表現したくて、「掌握」という言葉を使っている。
というわけで
- どこに変更を入れると、どんな風に波紋が広がるかを、自分の言葉で言えるようになっている
- 変更を入れようとしたときに大きな反発が起きない
というのが目指す姿だった。
なお「この音とまれ! #118」の「掌握する」のシーンは最高に痺れるからぜひ読んで欲しい。単行本では 28 巻に収録されています。
初動の失敗
異動後に、以前のチームにも引き続き同じように顔を出す、というのをやっていた。どうせ当面のアクションは「観察」なので、言うて社内異動だしある程度知っていることもあるだろうから、片手間っぽくても成立すると油断していたのだ。
実際には片手間ではまったく無理で、1ヶ月経った時点で何も判断できるようになっていない自分に気がついて、ようやく焦って動きを変えた。
具体的には
- Slack のチャンネルの並び順を変えて、自チームのチャンネルのみを一等地に置き、他のチャンネルは視界に入りづらいように押し込める
- デイリースクラムの司会を貰う
- 既存の Issue をとにかく読む
をやった。あと意識的に旧チームから離れた。
この結果、何も進捗しなかった1ヶ月とは打って変わって急速に「掌握」に辿り着けたんじゃないかと思う。
各リーダーからのヒアリングや 1on1 さえやっていたら片手間で辿り着けると思っていたが、思っていた以上に無理で、これは自分でもビックリした。
僕は自分の意識の大半を向けないと、想像を膨らませる遊びができなくて無能になるっぽい。想像を膨らませるというのは、どうやら、仮にこの仕事を〜〜がやったとしたら上手くいくか、チームをこう分割すると認知負荷が減るか、リーダーを誰に任せると覚醒し得るか、という思考実験を脳内で無限に繰り広げている、らしい。最近気づいた。
オチはない
コードを読まないマネジメントスタイルを試してみているが、果たしてできているのか、このスタイルが良いのか悪いのかはまったく判断できていない。
自分の感覚としては、コードを読んでいたときとそんなに全能感は変わっていない。各サブシステムの関係性のみの把握でなんとなく運用を理解することはできているし、判断する際にもどちらが正しそうかを選べているんじゃないかと思う。が、根拠の幾つかが伝聞に変わっているので、危うさはありそうな気がする。
コードを読んでいたときは、コードベース上に表現されるアーキテクチャに対して想像を膨らませて遊んでいた。現在はチーム上に表現されるアーキテクチャに対して想像を膨らませて遊んでいそう。変化させる対象がコードベースからチームに変わっているかもしれない。
似たような話が Hatena Engineer Seminar #26 「エンジニアリングマネージャー編」 でもありましたね。
手を動かさないスタイルを試し過ぎた結果、戻れなくなることがあるのかどうかもまだ判断できない。なんとなく、丸 3 年ぐらいなら戻って来られそうな感覚はある。
3 年でエンジニアとしての経験値を使い切りそう (現場感の喪失) で、そこから先は戻るのにコストが必要になるんじゃないかって感覚はあるなー。5 年だと 2 年分ぐらい取り戻さないといけない。
— Takafumi ONAKA (@onk) August 18, 2023
特にオチはない。
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